インタビュー
神石高原町民の方、神石高原町で事業を営む方に、神石高原町の魅力はもちろん、
大変だったことや、神石高原町での今後のビジョンまで、赤裸々に語っていただきました。3>
神石高原産木材のブランド化で、雇用を増やしたい
緑豊かな神石高原町で、3代続いて伐採・製材業を営む佐々木林業。フレッシュな3代目は、神石高原町を知り尽くす明るく気さくな社長です。神石高原町のことや、神石高原町だけでなく国内の林業全体が抱える課題への取り組みについても伺いました。
佐々木林業有限会社 社長
佐々木貴規さん
1985年神石高原町生まれ。神石高原町の佐々木林業有限会社・三和チップ有限会社代表。伐採業、製材業、製紙用のチップの製造、バイオマス発電所への出荷などに取り組む。
渋滞知らずの通勤、空気が美味しく人情があつい神石高原町
―佐々木さんは、神石高原町にある製材会社の代表でいらっしゃいますね。はい。会社は、昭和32年に祖父が創業しました。私は神石高原町で生まれ、幼稚園から高校まで神石高原町内です。その後大阪の大学で4年間学び、大阪で5年程働いて10年ぐらい前に神石高原町に戻り、2020年に代表に就任しました。
―神石高原町ってどんな所でしょうか。良い所と悪い所をそれぞれ教えてください。
う~ん。まず良くも悪くも「田舎」です。空気が澄んでいてとてもおいしくて、夏は涼しいです。ティアガルテンというキャンプ場は広々としていて気持ちがいいですし、道の駅182ステーションでは、無農薬にこだわった農家さんの採れたて野菜などがたくさんあるので、人も多くてにぎわっています。
妻が福山市で働いているので、結婚後は福山市と神石高原町の間にある福山市神辺町というところに住んでいて、私は毎日この神石高原町に車で30分ほどかけて出勤しています。行きも帰りも信号がないから渋滞知らず(笑)。移住を考えるのであれば、神石高原町内に住んで福山市に通勤というのも可能ですよ。
神石高原町は子育て支援も手厚いです。保健師・栄養士は役場に常駐しており、助産師も定期的に来ているので、困った時にはいつでも個別に相談でき、訪問もしてくれます。子どもも少ないので、一人ひとり把握してくれています。子育て応援給付金も手厚いです。妊娠をした時点でもらえる国の出産応援ギフト・子育て応援ギフトのほかに、1歳を迎えれば保護者に20万円。小学校・中学校に入学時には10万円もらえます。
また、神石高原町は、人のつながりが強いですね。何かあったらすぐ周りの人間が助けてくれるところは本当にありがたいです。
8年ぐらい前に、母が倒れて救急車で病院に担ぎ込まれたときも、近所の方が交代で家に来てくれて色々とお世話をしてくれました。周りに助けてもらっていると実感しました。9年ほど大阪で暮らして、神石高原町に帰ってきたときには、どこに行くにも車で30分~40分かかるし、スーパーはなく、不便なところばかり目につきました。でも、地域の商工会やグループに顔を出すようになって仕事も広がり、次第に町の良さに気づいたところもあります。
色々な方に出会えて、それが自分のこれからの大きな財産になっていくのかなということも感じています。今年の夏は、小さな音楽イベントを企画しています。小学生や地元のグループが歌ったり、出店なども出して楽しいイベントにする予定です。(※2023年8月11日開催済)
神石高原産原木の単価が上がれば伐採業者が増える
―代表になって3年目とのことですが、手ごたえはいかがですか。まだまだ3年目なので新しいことをやるというよりは、今は祖父、父親がやってきたものを勉強中という感じです。とはいえ、おかげさまで父もまだ現役で元気に仕事をしておりますので、わからないことを聞きながら自由に活動ができています。私が色々な会議に参加させてもらって人との繋がりが強くなれば、会社としてできることも増えてくるかなと思っています。
―神石高原町について思うことはありますか。
人口が減っているのはとても気になっているので、地元企業で雇用を生み出すような努力が必要だと思っています。わが社に関していえば、製紙用チップを作るのにどうしても原木が必要です。砕いてそれを製紙用チップにするのですが、入荷がとても減少しているので、自社で人を増やせば伐採量も増えるし、雇用にも繋がるのではと思っています。
―なぜ、原木の入荷が減っているのでしょう。
伐採業者の高齢化が進み、木を切れる人数も減っているんです。
―伐採業者はなぜ増えないのでしょうか。
今は、木を切っても木自体の金額が安く、売り上げが立ちにくいので、伐採業者になる若者がなかなかいないんです。安い外国材に押されてしまっていますが、雨が続いて山に行けなければ出荷の量が減りますから、安定供給といった意味では外国産の木材も必要だと思います。ただ、国内産の需要が減っているのは問題です。森林が適切に伐採されずに放置されれば、太陽光が地表まで届きづらくなり、樹木もしっかり育ちません。土壌が緩み、土砂災害などが発生しやすくなりますから、適切に伐採をし、適切に間伐材を利用することが求められるのです。
神石高原町にとって一番いいのは、広島県産材・神石高原産材の価値が上がること。そうすれば、原木の単価が上がり、もっと伐採業者さんが増えると思います。
質の高い神石高原産の木材の価値をもっと広めたい
―神石高原産の木材は、どのような特徴がありますか。神石高原産の木材は質がいいんですよ。山に栄養が少なくて寒いところなので、木の成長が遅くて、目が詰まった木ができます。丈夫で強い木になるんです。その土地で生まれた木を使って建てた家は長持ちするといいますが、これは建てた人にとっても木にとってもうれしいこと。広島県産材・神石高原産材を使った建物が増えたら、伐採業者はすごく活性化すると思います。もっと広く神石高原産の木材の価値を知ってもらえるといいですね。