地元高等学校連携
油木高校 東京視察プロジェクト
MSERRNT(マサーント)では、神石高原町にある広島県立油木高等学校(ゆき こうとうがっこう)と連携し、
同校生徒の学びの支援を行っています。その一環として実施されたのが、油木高校生徒の東京視察プロジェクトです。
目次
- きっかけは、生徒が投げかけた疑問点
- 東京視察プロジェクトの目的
- 東京視察の内容と当日の様子
- 1日目
- 2日目
- 視察を終えて
きっかけは、生徒が投げかけた疑問点
東京視察のプロジェクトが始動したきっかけは、MSERRNT 広島支店長が油木高校を訪問していたときの出来事でした。
訪問中、油木高校の先生から「ある生徒が話をしたいとのことなので、会って欲しい」と頼まれたのです。
すると、その生徒は次のように語りました。
生徒:僕は、油木高校で農業について学んでいますが、疑問に思っていることがあります。農家の方が栽培した野菜は、お店でとても安く売られていますが、これはどうしてですか?
おばあちゃんが育てたネギは、地元では1束 100円で売られています。しかし、都会ではネギが1束 300円ほどで売られていると聞きました。おばあちゃんが一生懸命育てたネギが、なぜ地元でたった100円でしか売れないんでしょうか?地元で1束 300円で販売できないのですか?僕は、これが納得できないのです!
そこで「どうすればいいと思いますか?」と問い返すと、こう答えました。
生徒:売り先を自分たちで見つけて、交渉してみたらどうでしょうか?
それを聞いた支店長は、思わず「それは正しいですよ!」と返答。
私たちが感じていた問題点を、なんと地元の高校生も同じように感じていたのです。
とても感動しました。
そして生徒に対し、まずは日本の野菜販売の現状を知るために、東京への店舗視察を提案しました。
生徒:ぜひ、お願いします!
さらに、油木高校もこれをバックアップすることに。
こうしてMSERRNTと油木高校による、生徒の東京視察プロジェクトが始まりました。
東京視察プロジェクトの目的
生徒は、野菜農家の抱える「栽培技術と販路確保の安定化」と「輸送コストによる販売価格の上昇」という問題を解決するため、「有機農業生産者が集中して栽培に取り組める環境をつくり、流通・販売を担う」という目標を掲げています。
そして地方の生産者と都市部の消費者をつなぐ架け橋となる仲介者が入ることにより、地方を活性化できるのか?という課題も見つけました。
また生徒は、実際の東京視察に際し、以下のようなポイントを学びたいとのことでした。
- 野菜の需要のマーケティング
- 消費者を意識したパッケージや売り方、どのような商品の見せ方に消費者が引かれるのか
- 生産者と消費者をつなげる流通の方法や工夫
実際に東京の店舗を視察することにより、野菜販売の現状を把握し、生徒の活動のヒントにしてもらうのがプロジェクトの目的です。
また実際に販売実習もおこない、販売の実践力も身につけます。
東京視察の内容と当日のようす
2022年11月26日(土)〜27日(日)の1泊2日で、MSERRNTの選定した東京都内のスポットをまわり、視察や販売実習をおこないました。
- 視察・インタビュー:ヒルズマルシェ(物販イベント)
- 視察・インタビュー:ビオセボン麻布十番(小売店)
- 視察:その他のスーパー、小売店
- 視察:TAU(広島県アンテナショップ)
- 販売実習:TAU
油木高校生徒の東京視察当日のようすをリポートします。
1日目
1日目は、ヒルズマルシェとビオセボンの視察とスタッフへのインタビューを実施。
さらに生徒の要望で、その他のスーパーマーケットやハチミツ専門店も視察しました。
最初の視察地は、「ヒルズマルシェ」。東京・赤坂のアークヒルズで開催されている、物販イベントです。
生徒たちは積極的にいろいろな出店者と話をし、仲良くなっていました。
なんと、野菜の生産者さんとLINE交換も。野菜づくりなどのアドバイスを受けるそうです。
そして、主催者の脇坂さんにインタビュー。
生徒たちは、脇坂さんにさまざまな質問をぶつけていきました。
視察のポイント
- 運営会社が支払っている場所の使用料
- 運営スタッフの人数と人件費
- 出店店舗の費用
- ターゲットはどんな人か
- 来場者数
- 自身が消費者目線となり、どんな商品が販売されているかの観察
- 商品の内容やパッケージ、店舗の雰囲気など
ビオセボン麻布十番 視察・インタビュー
次の視察先は、「ビオセボン(Bio c’ Bon)麻布十番店」。フランスで生まれた、オーガニックスーパーマーケットです。
店長さんが手が空いたとき、生徒を呼んでいろいろ話をしてくださいました。
また店内の案内もしていただき、生徒たちはスムーズに視察ができたようです。
視察のポイント
- 店舗の出店費用、家賃
- 農産物の仕入れ方法
- 都内の他スーパーとの価格差
- どのようなストーリーで販売されているか、どのように発信しているか(ブランディング)
- 販売する対象
- 自身が消費者目線となり、どんな商品が販売されているかの観察
- 商品の内容やパッケージ、店舗の雰囲気など
その他の店舗の視察
ヒルジュマルシェやビオセボン麻布十番のほか、近隣にある別のオーガニックスーパーやディスカウントスーパーなどを回り、見学しました。
さらに生徒からの要望で、急遽ハチミツ専門の小売店へ。
実は2日目の販売実習で、神石高原町産のハチミツも売ることになっています。
そのため、事前に勉強をしたいとのことでした。
2日目
2日目は広島県のアンテナショップ「TAU(タウ)」を視察し、そしてTAUでの販売実習を行いました。
視察・販売実習のポイント
- 宅配便と、トラック輸送を想定した場合とを比較した原価の差
- 高校生のブランド力(「高校生の商品」という物語を意識して販売)
- 自身で価格設定をして販売し、地域の道の駅と設定価格の印象に差が生まれるかの検証
- 来館者の観察(ターゲット、求めている商品)
販売の準備
TAUの店内で生徒が交代しながら売場に立ち、神石高原町の産品を販売します。
商品は事前に発送しました。
販売する商品は、 以下のとおり。
目標とする売上は、160,660円。売上総利益 26,446円を目指します。
今回、商品の値付けや利益の出し方などについては、すべて生徒に任せました。
アドバイスできる点も多くありましたが、あえてMSERRNTからは何も言っていません。
当日は9時30分より現地入りし、10時30分のオープンに向けて生徒自ら商品を陳列していきます。
販売売場は正面入口のところで、まさに最高の場所。TAUは、週末の来店者数は1日約2,500人だそうです。
販売実習は、オープンの10時30分から16時ごろまで行います。油木高校の生徒は、いったいどのくらい販売できるでしょうか?
販売実習開始
ついに10時30分のオープンに。続々とお客様が入店されます。
……しかし、なかなか売れません。お客様が売場に来ません。
そこで引率しているMSERRNTから「広島県の高校から来ました! 私たちがつくりました!」とアナウンスしてみては? と一言アドバイス。
すると、お客様が油木高校の売場に立ち止まるようになりました。
生徒たちは立ち止まったお客様に対し、商品にかける熱い気持ちを伝えます。そして、商品を買ってくれるお客様も大勢いました。
販売実習の結果
油木高校生徒による販売実習の売上金額は、80,000円弱でした。
目標の売上金額は160,660円でしたので、売上目標のおよそ半分という結果です。
原価率は57%なので、粗利益は約34,400円。
送料は約15,000円かかっていますので、差し引くと20,000円弱の利益です。
さらに20,000円から人件費を差し引くと、利益はほぼプラスマイナス0といったところ。
生徒は、以下のような気付きがあったそうです。
- 油木高校ブランドは広島県では全く通じないが、東京(TAU)では「広島県からきた高校生」というアピールは利いた
- 生徒がつくったもち米、お餅は飛ぶように売れた
- いっぽう、生産者から預かったお米、ハチミツ、味噌はあまり売れなかった
- 自分たちでつくったものは熱意が違うので、セールストークが上手くできるため、生徒のつくったもののほうが売れた
- 目立つ売り場の設置方法を学んだ
生徒たちは、儲けることの難しさを体感しました。
視察を終えて
東京視察を終えて、参加した生徒たちから次のような言葉をいただきました。
生徒たち:本当に楽しかったです!ありがとうございました。でも販売実習の結果はくやしいので、ぜひリベンジをしたいです!
東京視察を通じてたくさん勉強し、いろいろ感じてくれたようです。
このすばらしい活動を後輩たちへ伝え、今後も継続していってもらえればうれしいと思います。
そしてMSERRNTは、がんばっている生徒を全力でサポートしていきます。